化粧品の売り場では「有効成分」という表示をほとんど見かけない。一方で医薬部外品と書かれた商品には、この言葉がよく使われている。同じ棚に並んでいても、使える言葉と使えない言葉が違うのはなぜか。この違いは、成分の働きの強さではなく、法律上の区分によって決まっている。
「有効成分」が出てくるのは医薬部外品の側の文書
医薬品医療機器等法は、医薬品・医薬部外品・化粧品という三つの区分を定めている。この法律のもとで、それぞれの区分は目的や規制の重さが異なる扱いを受ける。
医薬部外品の効能効果の範囲を定めた別表4-1を読むと、成分の名前が出てくる。たとえば清浄用綿類は「塩化ベンザルコニウム水溶液またはグルコン酸クロルヘキシジン水溶液を有効成分とする」ものと書かれていて、成分がその区分の定義そのものに入っている。
一方、化粧品の効能の範囲を定めた別表第1の56項目には、成分の名前が一つも出てこない。書いてあるのは「肌を整える」「皮膚の乾燥を防ぐ」のような、商品の側の言い方だけである。どちらが優れているという話ではなく、範囲の決め方が最初から違う。
書ける効能は、成分ではなく区分で決まる
化粧品が広告や表示で書ける効能は、厚生労働省の「化粧品の効能の範囲の改正について」が定める別表第1、56項目の範囲内に限られる。この範囲を超える効能は、化粧品として書くことができない。
医薬部外品が書ける効能は、「試験問題の作成に関する手引き」の別表4-1が、区分ごとに定める範囲内に限られる。医薬部外品にも、書いてよい効能の一覧があらかじめ決められている。
いずれの一覧も、配合されている成分の働きを一つずつ説明したものではない。区分そのものが、書ける効能の枠を決めている。ある成分が実際にどう働くかとは別に、どの区分の商品であるかによって、表示できる言葉の範囲が変わる。
医薬部外品は「製剤の種類」でも範囲が分かれる
別表4-1には、殺菌剤主剤製剤・消炎剤主剤製剤のように、製剤の種類ごとに行が分かれ、書ける範囲が違う項目がある。医薬部外品という大きな区分の中に、さらに製剤の種類という細かい区分が存在する。
つまり、同じ医薬部外品であっても、その商品がどの製剤の種類に当たるかによって、書ける効能の範囲が変わる。殺菌剤主剤製剤として認められた範囲と、消炎剤主剤製剤として認められた範囲は、同じ医薬部外品でも一致しない。
成分名だけを見ても、その商品がどの製剤区分に当たるかは分からない。製剤の種類は、成分の名前ではなく、その製品がどう位置づけられているかによって決まる仕組みになっている。
全成分表示に名前があっても、書ける効能は増えない
化粧品は「化粧品の全成分表示の表示方法等について」に基づき、配合したすべての成分を表示する決まりがある。これにより、消費者はどのような成分が使われているかを確認できる。
記載順は、配合量の多い順とするのが原則である。ただし、配合量が1%以下の成分と着色剤については、順不同で差し支えないとされている。そのため、並び順だけを見て、実際の配合量を判断することはできない。
ある成分の名前が全成分表示に載っていたとしても、その商品が主張できる効能は、化粧品の56項目の範囲内のままであり、成分名が載ることによって増えるわけではない。全成分表示は配合の有無を示すものであり、書ける効能の範囲を広げるものではない。




